追憶の日常

想い出、過去、記憶

ストッキング

ある日、帰宅して玄関で靴を脱いで床に足をついたら、床の冷たさがストッキング越しに伝わってきた。

自室で着替えていたらストッキングが伝線しかけてることに気づいた。外側の大腿部からふくらはぎにかけて薄く綺麗なカーブを描いていた。カーブを人差し指でなぞってみた。

ある時は、車内の後部座席でブーツのチャックをしめようと脚を組んだら、ブーツのかかとでストッキングの左膝の部分を引き裂いてしまった。


あの日ストッキング越しに感じた床の冷たさと伝線しかけたストッキングのカーブをなぞった背徳感を私はまだ誰にも伝えていない。
引き裂いてしまったストッキングはほうき星にはなれなかった。